
韓国の連休シーズン到来、旅行需要は日本へ?6月大統領選・10月大型連休がもたらす影響とは
2025年、韓国からの訪日旅行需要において日本のインバウンド業界が注目すべきは、6月と10月の連休日程と為替レートの動向です。
特に、6月の大統領選による臨時休暇と、10月の連休構成は単なるカレンダー上の出来事ではなく、旅行需要を左右する明確な経済シグナルと捉えられています。
さらに、円安傾向や米国の政治不安など外部要因が重なり、予想以上に早い短距離旅行の回復傾向が見られています。
本記事では、これらの背景をもとに、韓国人旅行者の動向とその対応策を実務感覚とデータの両面から読み解きます。
6月3日 → 大統領選で“平日連休”が可能に

韓国6月連休構成と旅行動向
2025年6月3日(火)は、韓国の第21代大統領選挙の投票日です。
法律により臨時公休日に指定されるため、5月31日(土)〜6月3日(火)をたった1日の有給取得で最大4連休にできます。
渡航パターン:
事前投票(5月29〜30日)を利用し、
→ 5月30日〜6月2日に出発、6月3日帰国が主流に
当日は居住地でしか投票できないため、6月1日までに出発が現実的
このように、韓国では大統領選を起点とした“平日型連休”が形成される可能性があり、短期旅行の需要が一気に高まることが予想されます。
こうした動きに合わせて、インバウンド業界としては以下のような対応を検討するとよいでしょう。
– 航空会社・OTA:5月末〜6月初旬にかけて、韓国発の金曜日、週末便・月曜便の価格調整の検討
-ホテル:6月1日〜3日の宿泊者向けに、チェックアウト時間の延長や朝食無料といった“平日特典”の提供
-小売・免税店:韓国語のSNS投稿強化に加え、事前投票を済ませた旅行者を対象とした来店特典(例:割引クーポン、ノベルティ配布)、
-6月初旬の特定期間に合わせたセット割やポイント付与キャンペーンなど、旅行中の購買意欲を喚起する施策
✔ 韓国市場からの検索流入や予約行動が集中する週となることが見込まれるため、販促施策のタイミングや訴求軸を工夫することが効果的です。
為替の動きと“お得感”──感じ方には差がある
2025年5月時点での円相場は1ドル=約149円と、ドル基準では円安傾向が続いています。(参考 三井住友銀行 )
しかし、韓国ウォンとのレート(100円=約953ウォンHANA BANK )では、旅行者が以前より安いと実感するケースは限定的であり、航空券や宿泊費への負担感は依然として高いという声も多いです。 一方で、ドラッグストア、コンビニ、飲食など日常消費の分野では“コスパの良い日本”という印象は根強く残っています。特にブランド化粧品や雑貨、食品系の価格差は韓国と比べて20〜30%安いケースもあり、「買い物目的」での渡航には依然として魅力があります。 ポイントは「どこで円安メリットを感じさせるか」。トータルの旅行費ではなく、現地での“体感的な価値”に注目した販促戦略が求められます。
不安定な世界情勢が後押しする近距離志向、トランプ発言と米中関税緩和のはざまで
2025年5月9日、トランプ前大統領による「輸入品への10%関税維持」発言に続き、12日には米中間では90日間限定の関税緩和措置が発表されました。
一見、長距離移動の障壁がわずかに緩むようにも映りますが、むしろ浮き彫りになったのは、依然として続く国際情勢の不安定さです。
先行きの見えない外交関係、為替や物価の変動、燃料コストの高止まり。こうした要因が重なる今、旅行者の間では「今、行くなら近くて安心な場所を選びたい」という意識が静かに広がっているように感じられます。遠くより、近くへ。
それは距離の問題というよりも、不確かな時代を旅するうえでの、ごく自然な判断なのかもしれません。
10月にも「最長10連休」のチャンス!
韓国では10月にも大型連休の可能性が注目されています。
ポイントは10月10日(金)が臨時公休日に指定されるかどうか。
こうした突発的な休日は、旅行者の予約行動や企業の生産スケジュールにも影響を及ぼします。特に製造業や中小企業では、突然の休日で納期に支障が出る、機械の稼働計画をやり直す必要があるといった声があがっています。また、旅行者からも一番の障害は会社ではなく政府の決定タイミングだといった不満が見られ、事前通知や予測可能性の向上を求める声が高まっています。
✔ いずれにしても、2025年韓国最大の連休となる可能性がある10月上旬には、多くの訪日韓国人旅行者が見込まれることから、観光・宿泊・交通・小売など各現場において、柔軟なサービス提供体制や販促準備を早めに整えておくことが望まれます。

2025年の韓国市場では、選挙日程、為替変動、国際情勢の不確実性といった複数の外的要因が重なり、短期旅行需要に直接的な影響を与えています。
こうしたマクロな要素が不安定であるほど、旅行者は「どこなら安心して行けるか」「費用に対して満足できるか」といった、主観的で生活者視点の要素を重視する傾向が強まります。 そのため今後は、単なる価格や日程だけでなく、旅行者が何を価値と感じているのか、どのような判断軸で目的地を選んでいるのかといった意思決定プロセスを把握する視点が、より重要になってきます。
韓国市場の変化をタイムリーに捉え、動向をリサーチし、トレンドを先読みして柔軟に対応できる体制を整えること。こうした継続的な市場把握と戦略設計の精度こそが、持続的なインバウンド対応力を高める鍵となるでしょう。
このコラムを書いた人

グローバル・デイリー / 広報部
韓国出身。旅行業やマーケティング会社の運営を通じて、インバウンドに関わる企画・販売・情報発信まで幅広く携わってきた。 実務で培った視点をもとに、現在は自治体や企業向けに、海外向けコンテンツの制作やセミナーを通じて、インバウンド施策を支援している。
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