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コラム

UNIQLOのグローバル化とインバウンド

Uniqlo
「ユニクロ」と「GU」を展開する、株式会社 ファーストリテイリングによると、2018年度(2017年9月~2018年8月)のグローバル売上高(8963億円)が国内の売上高(8647億円)を超えたそうです。
2002年に初の海外店舗(中国・上海)をオープンしてから16年目の売上逆転ということになりました。
ブランドのグローバル化が着実に進み、成果に繋がっているポジティブな業績ですが、縮小傾向が進む国内市場への課題も抱えている中、そのヒントをインバウンドからつかんでいるように見えます。
今日は、訪日市場の現場から見た「ユニクロの日本と世界の戦略」について解釈してみました。

・国内の成長鈍化と新たな動力の模索
「フリース」や「ヒートテック」などのヒット商品を世に出し、国民的アパレルブランドとして1990年代から2000年代初頭まで二桁成長を続けてきたユニクロは、2014年の値上げ施策以降、価格に敏感になった国内消費トレンドの変化により、好成長は落ち着きました。
国内のアパレル市場は、以前のコラム〈アパレル市場と訪日消費〉でお伝えした通り消費縮小傾向にあり、少子高齢化の影響圏にある業界といえます。ユニクロはオンラインストアの展開とともに、低価格のSPAブランド「GU」の店舗を拡大することでこの状況を乗り越える戦略をとっています。
2019年1月現在、国内のユニクロ店舗は831か所で、5年前に比べ22店舗が減りましたが、同期間でGUは100店舗以上増えており、よりカジュアルなファストファッションブランドのポジションを固めています。

・ジャストフィットなローカライズ戦略
海外でユニクロの成長が最も目立つエリアは、中国・台湾・香港をはじめとする中華圏市場。2013年から昨年までの売上は約4倍増、店舗数は280から756へと約2.7倍も増えました。中国進出初期の3年間は、低価格&郊外中心店舗という日本と同様の戦略で苦戦しましたが、中間層へのターゲットシフトや日本より割高の価格設定と品質へのフォーカス、大都市の大型モール中心の店舗展開などの現地化が的中しました。
消費者インサイトを的確に捉えた「逆発想」のローカライズも目を引きます。東南アジア市場ではムスリム向けのヒジャブを展開したり、経済成長による海外旅行の増加で、年中30℃を超える気候にもかかわらずフリース、ヒートテックなどの商品販売が好調で、これらも市場の文化トレンド変化といった需要をいち早くキャッチし商品展開を工夫した現地戦略のフィッティングと言えるでしょう。
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・グローバル好調と足並み揃えるインバウンド市場
では、インバウンド・訪日消費向けの戦略はどうなのでしょう。
もちろん、海外事業が好調なので海外投資拡大も行われるでしょうが、全体的にはユニクロ自体のブランド向上につながるため、訪日消費にも好影響を与えるからくりになっていると思われます。今までの海外ローカライズ戦略の柱としてあるのが「日本より高価格」であることです。これは「日本で買うと割安」というメリットを生み、実際に免税や国内需要向けのセールなどの恩恵から、今や訪日外国人のユニクロショッピングは定番化されています。それに、限定・コラボ商品など日本でしか購入できない希少価値のあるアイテムの投入も訪日客が店舗に足を運ぶ大きな要因となっています。

日本のアパレルブランドの代名詞となっている、日本のみならず世界人の「Lifewear」になりつつあるユニクロ。巧みなローカライズをもとに海外事業の好調が続く中、衰退していく国内市場においてもグローバルなブランディング展開とインバウンド施策を軸に上手くバランスを維持する戦略は、日本のアパレル業界において参考すべきベンチマークの価値があるのではと思います。