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コラム

世界的な抹茶人気で、日本では品薄状態。今後、お茶需要の分散化が鍵?

抹茶ブームの世界的拡大と日本の品薄問題

日本の抹茶は現在、世界各国で注目を集め、特にタイやアメリカでその人気が上昇しています。日本政府観光局(JNTO)が発表している「外国旅行の動向」によると、タイでは抹茶ラテ、抹茶アイス、抹茶チョコレートなど、さまざまな抹茶商品が市場に広がっており、抹茶は現地で非常に人気があります。タイからの訪日観光客が抹茶スイーツを楽しむことを目的に日本を訪れるケースも多いとのこと。特に京都の老舗カフェや和菓子店を訪れることが人気で、抹茶関連の商品を土産として購入する観光客も増加しています。こうしたタイ国内での抹茶人気は、訪日客の増加や日本での観光体験、購買行動にもつながっており、抹茶を活用したインバウンド施策には参考となる部分が多くあります。
アメリカでも抹茶人気は広がっており、中でも注目なのは茶道具の需要が増加していることです。アメリカでは日本茶文化への関心が高まっているためと思われます。抹茶はカフェチェーン、スターバックスをはじめとするお店で抹茶フレーバーが提供され、より身近な存在となりました。また、抹茶や煎茶などの違いも認識されておらず、緑茶も含め需要はあがっています。抹茶や煎茶、緑茶の違いについては、訪日外国人向け日本情報サイトJAPANKURUで配信された英文記事『What are the differences between Green Tea and Matcha?』をぜひご参考ください。

また、この影響を受け、アメリカ市場で日本のお茶文化を体験したいというニーズが高まり、茶道具が新たなトレンドとして注目をされつつあります。
しかし、このような世界的な抹茶人気の高まりは、日本国内での供給不足を引き起こしています。農林水産省のデータによると、抹茶を含む緑茶の輸出額は2024年に前年比25%増の364億円を記録し、過去最高となりました。これは、円安や訪日旅行ブーム、SNSの影響などが相まって、海外からの需要が急増したためです。しかし、日本の抹茶の生産は、主に手間がかかる日陰栽培や特殊な製造工程を経て作られるため、急激に生産量を増やすことが困難です。加えて、生産者の高齢化と後継者不足が深刻な問題となっており、抹茶業界の供給体制に影響を与えています。また、海外では人気の高まりから高値で転売される動きもあり、同一住所への大量発送や転売が想定される過剰な注文には応じないといった対策を講じていますが、完全に抑制はできていません。

日本の抹茶不足の具体例を紹介

抹茶の人気が世界的に高まる中、その供給が追いつかず、日本国内で抹茶の品薄問題が深刻化しています。特に、訪日客がSNSに投稿することをきっかけに、抹茶に対する需要が急増し、長年の歴史を持つ老舗抹茶メーカーにも影響が出ています。
例えば、京都に創業約300年を誇る抹茶メーカー「丸久小山園」は、抹茶パウダーの品切れに直面し、昨年10月には販売制限を設けざるを得なくなりました。丸久小山園は、長年の顧客である茶道関係者や寺社関係者への供給を最優先にするため、一般向けの販売を制限しました。また、京都の老舗「一保堂茶舗」も抹茶不足の影響を受け、特定商品の販売を一時的に停止しました。同社は、仕入れコストの増加を受けて、一部商品を値上げしています。
ですが、すべての抹茶関連企業が品薄状態にあるわけではありません。丸久小山園のように、長年の取引先との契約や信頼関係に基づき、一定の供給を確保している企業もあります。しかし、抹茶事業を新たに始めようとする企業にとっては、十分な量を供給できる生産者を見つけるのは難しくなっています。

供給の分散化が必要?
抹茶の人気は今後も続くと予測されていますが、供給量の安定化には限界があります。そこで、抹茶以外の日本茶の需要を高めるために、紅茶やほうじ茶などの代替品のブームを起こすことが重要な課題と考えます。日本でも紅茶やほうじ茶は健康志向の消費者に人気があり、日本製をPRできればブームを作ることもできるかもしれません。今後は抹茶の代わりにほうじ茶や煎茶など、他の日本茶の魅力を海外に広めることが、供給と需要のバランスを取るための鍵となるでしょう。

参考資料:
Bloomberg(アメリカ)
世界中の抹茶ブームで日本国内の品不足が深刻化
訪日ラボ
世界で注目「抹茶・緑茶」人気の理由とは?インバウンド集客のポイント・事例も解説
JAPAN FORWORD
海外から熱中視「宇治抹茶」売れ過ぎ 訪日客も爆買い、販売制限の動きも

このコラムを書いた人

藤田(Fujita) プロフィール写真
藤田(Fujita)
グローバルデイリー / 広報部
媒体部兼進行部の経験を経て、海外のプロモーション会社や出版社とのパートナーシップを築いてきた。各国のトレンドや需要を抑えながら、企業のニーズに沿ったインバウンドプロモーションについて長年にわたり従事。

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