
2025年、世界共通のキーワードは「健康」──中国人気商品5選から読み解く
「健康」。
この言葉は、パンデミック/コロナ以降、私たちの生活のあらゆる場面に深く入り込んでいます。健康に気を遣い、健康のために運動し、食習慣を見直す——それは国境や人種を越えて、誰にとっても等しく重要なテーマとなりました。
20025年全世界健康トレンド
出典元:Businesswire
「ヘルストレンド」という言葉は、もしかしたら聞き飽きてしまったかもしれません。しかし、好き嫌いに関わらず、今この時代を生きる私たちにとって、「健康」は避けて通れないテーマです。
興味深いのは、この「健康」という概念が、国や人によって異なる形で日常生活に反映されている点です。
パンデミックが収束した韓国では、在宅フィットネスブームがさらに進化し、今や「国民的フィットネス」へと発展。若年層を中心に、ネットカフェや自習室に通う人が減る一方で、室内スポーツや旅行を楽しむ人が増えてきました。
中国でも、人々が外に出るようになり、キャンプや登山、Citywalkなど、自分の街を再発見するようなアクティビティが人気を集めてました。短期間で複数の都市を巡る「特種兵式旅行(過密日程旅行)」も、若年層を中心にブームとなりました。
手段は違えど、共通するのは「健康」を志向する姿勢です。
では、こうした生活スタイルの変化だけでなく、日常的に口にする食品や飲料において、中国の消費者はどのような「健康」を選んでいるのでしょうか?どんな健康商品が人気で、どのようなPRポイントが日本企業の製品に活かせるのでしょうか?
本文章では、現在中国市場で注目されている製品カテゴリや成分に注目し、どのようにして消費者のニーズを製品に落とし込んでいるのか、また、どんな形で訴求されているのかを分析していきます。
日本企業の皆さまにも参考になる情報がきっとあるはずです。ぜひ最後までお読みください。
1. HPP飲料:栄養と風味を保つ「ハイエンド」な選択肢
HPP(高圧冷却処理)は、食品を低温下で高圧処理することで鮮度と栄養を保つ最新の保存技術です。
1.1 製品の特徴
HPPジュースは全工程を低温で管理し、超高圧で殺菌処理を行います。これにより、果汁の色や味をそのままに保ちつつ、最大で45日間の保存が可能となります。これは従来の果汁の弱点であった変質や栄養素の損失を大幅に改善するもので、「味と健康は両立できる」というメッセージを打ち出し、「子ども舌」層の支持も集めています。
1.2 市場の動向
HPP紅心リンゴジュース
出典元:Baidu
- 2022年末、盒馬(スーパー)は「如果(IF)」ブランドと協業し、果汁100%のHPP紅心リンゴジュースを発売。2023年11月~2024年4月の「紅心リンゴジュース季」には前年比400%の売上を達成。その後、盒馬は維果清と協力し、特小鳳スイカジュースやゴーヤジュースなどのHPP新製品を投入。
- Sam’s(スーパー)では2024年12月、「維楽鮮」HPPケール混合ジュースを発売し、「1本=5種類の野菜の栄養」を打ち出して月間20万本以上を販売。
2. 植物性飲料:ケールが代表する「グリーンブーム」
2.1 製品の特徴
健康意識の高まりとともに、添加物フリー・植物由来のドリンクが人気を集めています。中でも「スーパーフード」として知られるケール(中国語:羽衣甘藍)は、栄養価の高さとユニークな風味で、飲料業界のトレンドリーダーとなっています。
2.2 市場の動向
ケールジュースやスムージーはすでに多くのブランドで採用されており、「飲む野菜」として市場に定着しました。突如の人気で、ケールの値段も急激に上がり、央視(国家直所属番組)に取り上げたりもしました。
HEYTEA ケールミックススムージー
出典元:HEYTEA公式
- 2024年3月のケール仕入価格は前年の0.8元から3.5元まで高騰し、300%以上の値上がり。
- 国内販売比率は、従来の5%から55%に急増。
- 「HEYTEA」などの人気ティーブランドでは、「奪冠纖体瓶」が発売10日間で160万本、1カ月半で1,000万本超を売上。続く「去火纖体瓶」も、発売1週間で165万杯を突破。
3. 穀物系養生水:中医学伝統とモダンの融合「新中式ドリンク」
「紅豆薏米水(小豆ハトムギ茶)」に代表される「穀物養生水」は、伝統的な中医学の知見と現代的な製法を組み合わせた新しい中国式飲料です。
3.1 製品の特徴
小豆とハトムギの栄養を活かし、脾を健やかにし、水分代謝を促す効果があるとされます。甘すぎずさっぱりとした口当たりで、幅広い層に受け入れられています。簡単便利に健康を得たいと思っている若者のニーズに答えた「養生水」は現在、中国様々な小売で棚を取っている人気ものでもあります。
左から「ユリ根と雪梨の養生水」「紅棗と黄耆の養生水」「小豆とハトムギのドリンク」「みかんの果皮とサンザシの養生水」
出典元:茶小开公式
3.2 市場の動向
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中式養生水が含まれる植物飲料カテゴリは、2024年第3四半期の前年比成長率が37.64%に達し、即飲茶(無糖茶)の成長率4.1%を大きく上回り、飲料各カテゴリの中で成長率第1位を記録。
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2023年8月~2024年7月の1年間で、主流ECプラットフォームにおける中式養生水の売上は2億元を突破。前年比では162%の成長という驚異的な伸びを見せています。
4. ココナッツウォーター:自然派「電解質」飲料の王者
4.1 製品の特徴
電解質に加えて、ビタミンCやB群も豊富に含まれており、近年では、コーヒーや飲料に加えることでヘルシーな飲み物としても注目されており、多様な楽しみ方が広がっています。興味深いのは、多くのブランドがココナッツウォーター市場でシェアを争う中、それぞれが「100%ココナッツウォーター」や「Only ココナッツウォーター」といった純度の高さを前面に打ち出している点です。このことからも、成分表示はシンプルであればあるほど良いという、消費者の健康志向や「中身重視」の価値観が透けて見えてきます。
出典元:if family公式サイト
4.2市場の動向
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2024年4月、タイのifブランドの親会社IFBHが香港証券取引所へ上場申請資料から見ると、中国本土での売上比率92%。
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2023年における中国のココナッツウォーター市場の収益は約2億2,270万米ドルに達し、2030年には約7億4,030万米ドルに成長すると予測されています。2024年から2030年までの年平均成長率(CAGR)は18.7%と見込まれており、今後も著しい拡大が期待されています。
5. レモンウォーター:ビタミンCたっぷりのさわやか健康飲料
レモンウォーターは、昔ながらの飲み物でありながら、ビタミンCの補給や美容・免疫効果を求める現代消費者にぴったりな健康ドリンクとして再注目されています。
5.1 製品の特徴
酸味の効いた爽やかな風味に加え、免疫力向上・美白・消化促進などの効果が期待される「機能性 × 味」で消費者から人気を得ているドリンクです。
出典元:水獭吨吨公式サイト
5.2 市場状況
- レモン液カテゴリーの売上は過去1年で1200%増と、インスタントドリンク市場で最も注目を集める成長カテゴリに。
- 主流ECプラットフォームにおけるブランド「水獭吨吨柠檬液」の年間売上は約10億元(約200億円)に達する。
おわりに:日本企業へのヒント
HPPジュース、植物性飲料、穀物養生水、ココナッツウォーター、レモンウォーター。いずれも異なる切り口で「健康」をテーマにした商品ですが、その本質は「美味しさと健康の両立」にあります。
実は海外旅行中にも「健康」に気を配る人は多く、たとえば野菜不足を補うために「野菜生活」などのジュースを飲む人もいれば、疲労回復に「キレートレモン」を摂取する人もいます。プリンを食べながら野菜ジュースを飲む、というスタイルも今では珍しくありません。
「自社製品は健康すぎて中国市場では受けないのでは?」とPRに消極的な企業様へ——もしかすると、商品の見せ方を少し変えるだけで、十分に中国市場でのヒットが狙えるかもしれません。
あるいは、すでに製品に含まれる「中国人に馴染みのある成分」を活かして、うまく訴求できる可能性もあります。
私たちは、中国市場の最新トレンドに対応したPRソリューションを提供しています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
このコラムを書いた人

グローバル・デイリー / 海外消費者リサーチ・トレンド分析担当
アジア各国の“今どき”消費動向や人気商品のヒット要因を日々ウォッチ。 SNS分析や現地メディアの調査、商談現場の声などをもとに、インバウンド施策や越境マーケティングに役立つ情報をお届けします。 「実際に、現地でウケている理由は?」「数字の裏にある文化背景は?」──そんな疑問にこたえる視点を大切にしています。
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