
日本の「令和の米不足」がもたらす食卓の変化
高騰する国産米、台湾・韓国産の輸入拡大で消費者の選択肢に変化
2025年 日本はなぜ米不足なのか?
2024年夏以降、日本ではかつてないほどのコメ価格の高騰が続いています。実に14週連続で価格が上昇しており、5kgあたり4,400円を超えるケースも見られます。これは前年のほぼ2倍に相当し、SNSなどでは「令和の米不足」とも呼ばれるほど、消費者の混乱が広がっています。
主な要因としては、異常気象による不作に加え、長年続けられてきた減反政策の影響が挙げられます。「減反政策」とは、日本政府が農家に対して米の生産量を意図的に減らすように働きかける政策です。正式には「生産調整」とも呼ばれ、1970年に本格的に導入されました。また、2023年にはコメが約40万トン不足し、さらに2024年には新米を早期に消費する「先食い」が進んだことで、2025年1月時点で民間の在庫が43万~44万トン減少。政府は備蓄米の放出を行ったものの、大手卸業者を通じた流通に頼ったために、スーパーなどの小売市場への供給が追いつかず、価格安定にはつながりませんでした。
こうした中、一部の消費者は韓国旅行時に米を購入して持ち帰るなど、国外の米にも目を向け始めています。
韓国産の米も日本進出
こうした日本の状況を受けて、韓国の高級米「海南米」が日本市場へ初めて進出しました。KUKINEWSによると、2025年3月に2トンが輸出されたのを皮切りに、好評を受けて10トンが追加出荷され、さらに10トンの追加輸出も予定されています。
この海南米は、日本国内の農協系オンラインモールや韓国市場などを通じて販売されており、10kgで約9,000円という価格設定でありながら、完売となる人気を見せています。これは価格競争ではなく品質重視の戦略が成功していることを示しています。また、「セチョンム米」も日本に初輸出される予定で、今後の韓国ブランド米はぞくぞく日本進出されることが予想されます。
台湾輸出米 輸出増加
台湾産の米も、日本市場での存在感を大きく高めています。台湾農業部によりますと、2025年の日本向け輸出量は1万トンを超える見通しで、これは過去5年の平均輸出量(約3,500トン)の約3倍にあたります。
台湾米は無関税で輸出可能な「ミニマムアクセス」枠を活用しており、価格も日本米の半額程度と非常に競争力があります。味の面でも、日本統治時代に導入された日本品種に改良を加えており、粘りや柔らかさが日本米に近いと評価されています。
台湾農業部の胡忠一政務次長は、「日本市場で台湾米と競争できる国は他にない」と語っており、今後さらに輸出が拡大していく可能性があります。
台湾米、韓国米の味の違い
このように、台湾産・韓国産の米が市場に広がりを見せる中で、消費者にとっては「どの米を選ぶか」が新たな関心事となっています。それぞれの国の米には特徴があり、食感や風味にも違いがあります。
それぞれの米の特徴は次のようになっています。
- 日本米:強い粘りと豊かな旨味があり、炊飯器での調理に適しています。
- 台湾米:ほど良い粘りと柔らかさがあり、日本米に非常に近い食感です。
- 韓国米:粒がしっかりしており、粘りは控えめ。しっかりとした食感を楽しめます。
1993年の「平成の米騒動」では、冷夏による米不足によりタイ米が緊急輸入されました。タイ米は粘り気がなくパラパラとした食感が特徴で、炊飯器で炊いた米を主食としている日本人には、タイ米は炒めるなどで味付けをするレシピが多いものでそもそも、食べ方が異ります。筆者も、当時タイ米を食べましたが、日本米が恋しかったことを覚えています。今回の台湾・韓国米は、日本人の好みにより近い風味を持っている点で、当時とは大きく異なっています。
外国産米の今後の需要は?
今回の価格高騰をきっかけに、台湾米や韓国米といった外国産米がこれまで「主食の米は国産が当たり前」と考えていた多くの消費者にも、変化が見られるようになりました。
また、農林水産省が推進してきた減反政策は、価格を安定させる一方で、今回のような需給ギャップに対応しきれない弱点も明らかになりました。これからの日本に求められるのは、「余剰の時は輸出し、不足の時には輸入する」という柔軟な貿易体制の構築です。今後、一時的な代替手段ではなく、恒常的な選択肢として受け入れられ始める可能性もあります。
食料安全保障の観点からも、国産と輸入を適切に組み合わせていく新たなモデルが必要です。今回の「令和の米不足」は、単なる一時的な問題ではなく、日本の食のあり方そのものを見直す契機になるかもしれません。
参考資料:
韓国産の米、初の日本進出で初回分の2tが「全売切 KUKINEWS(韓国)
日本、14週間続く「米」価格の高騰…韓国旅行で購入も デイリー韓国(韓国)
韓国の「カンジン米」200tを日本現地へ供給…プレミアム市場を攻略ベータニュース(韓国)
このコラムを書いた人

グローバル・デイリー / 広報部
媒体部兼進行部の経験を経て、海外のプロモーション会社や出版社とのパートナーシップを築いてきた。各国のトレンドや需要を抑えながら、企業のニーズに沿ったインバウンドプロモーションについて長年にわたり従事。
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