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グローバルニュース

加速するインバウンドマーケティング、その目的は”爆買い”の創生なのか?

2015年は、「爆買い」が話題になった一年だった。

爆買いとは、中国を中心とする旅行者が、家電品や化粧品、衣料品、トイレタリーなどを一度にそして大量に購入すること。円安が追い風となってこの流れが続く中、「観光」が日本経済を立て直す成長戦略の柱として認識されるようになった。そこで注目を集めているのが、インバウンドマーケティングである。

本稿では、インバウンドマーケティングを展開しているマイクロアド・インバウンド・マーケティングの代表取締役・中山洋章氏に話を聞いた。

観光立国へ – 鍵は”プル型”のアプローチ

2013年に日本を訪れた外国人旅行者は、1,000万人を超えた。特に、韓国や台湾など近隣諸国からの旅行客は、週末で日本を訪れるというケースも多く、リピーターも少なくない。

最近では、こういった訪日外国人旅行者が、日本国内での商品の購入や宿泊、食事などで消費することを「インバウンド消費」と呼んでいる。インバウンド消費は、今や日本経済を下支えするまでに拡大し、その恩恵は交通や飲食、宿泊、流通、製造、伝統工芸など、幅広い領域に及んでいる。インバウンド消費の増加を狙ったマーケティング活動が活発化しているのも、当然の流れといえよう。

これまで、外国人をターゲットとしたマーケティング活動は、広告出稿に依存する「アウトバウンドマーケティング」がほとんどだった。例えば、展示会への出展や、現地での営業活動など、プッシュ型のアプローチが大多数を占めていた。

しかし、アウトバウンドマーケティングは、莫大な資金を投入して市場を開拓していくことになる。そのため、資金が潤沢にある大手企業でなければ行うことが難しい。同時に、訪日外国人旅行者に対して、この手法はあまり有効ではないという課題もある。

特に個人手配の訪日外国人個人旅行者は、ホームページやソーシャルメディアに掲載されている情報を自ら収集し、何を消費するか選択する傾向が強い。そういったターゲットにアピールするには、分かりやすい位置に自社のコンテンツを配置し、自らの手で情報を発見してもらう必要がある。この場合、プル型のアプローチである「インバウンドマーケティング」が効果的というわけだ。

実は、インバウンドマーケティングの成功事例は多い。実際、インバウンドマーケティングに成功したドラッグストアやディスカウントストアには訪日外国人旅行者が大挙し、特定の銘柄の商品が「爆買い」されているという。つまり、インバウンドマーケティングを活用すれば、街の小売店が「爆買い」の対象となることも十分あり得るのだ。

「インバウンドマーケティングのインパクトは大きいです。ある日を境に旅行客が殺到し、前年比300%の売り上げを達成するということも起こりうる。アウトバウンドマーケティングほど資金が必要ないことも幸いし、これまでマーケティング活動に積極的ではなかった小規模企業や団体などが、積極的にインバウンドマーケティングに取り組み始めていますね」(中山氏)

行政やアミューズメント施設もインバウンドマーケティングに注目

マイクロアド・インバウンド・マーケティングは、広告配信サービスで知られるマイクロアドの海外事業部が母体となるマーケティング専門会社。APAC圏を中心に10カ国・18拠点に現地法人を設立し、現地の文化やIT環境に適用しつつ現地に根付いた幅広いサービスを提供している。

「インバウンド市場の成長は著しいです。そこに目をつけた経営層が、マーケティング部門に対し、インバウンドマーケティングを実施するように指示するケースが増えてきていると感じます。しかし、国内を主戦場としていたマーケターにとって、各国の生活習慣やインターネット環境などを考慮した企画立案はハードルが高く、どこから手をつければいいのかわからない状況なのでしょう」と中山氏は分析する。

当然のことだが、マーケティング活動を展開するのであれば、ターゲットに対してきちんと訴求することができなければ意味がない。闇雲にマーケティング活動をしても、効果が出ることはないからだ。そのためには、訴求したい国や地域ごとに企画立案していき、マーケティング活動を展開していく必要がある。

ところが、それは決して一朝一夕でクリアできる課題ではない。だからこそ、マイクロアド・インバウンド・マーケティングをはじめとするマーケティング会社に相談するという企業が増えているのだろう。

「実際、広告主となる業界の裾野が広がってきています。これまであまりお付き合いのなかった地方などの行政機関や、水族館といったアミューズメント施設からもお声がけいただいているんです」と中山氏。インバウンドマーケティングに対する期待の高さが垣間見れる。

“爆買いを誘発するため”のインバウンドマーケティングなのか

インバウンドマーケティングで「爆買い」を誘発するためにはどうすればいいか、という相談も増えているという。これに対する明確な回答は難しい。しかし、タッチポイントを増やすことで、訴求力を強めていくことはできる。

マイクロアド・インバウンド・マーケティングでは、現地法人が各国の状況に合わせて活動しており、メディアを形成している。例えば中国では、地元の人気情報番組「東京印象」で購買意欲を高める商品紹介を実施したほか、全日空商事とアライアンスを締結し、地方創生に特化したインバウンドメディア「ANA EXPERIENCE JAPAN」の運営も支援している。このようなメディアを使うことで、タッチポイントが増えるだけでなく、各国のそれぞれの状況に合わせ、都度訴求していくことが可能となる。

このような取り組みが、ビジネスチャンスの獲得に結びついていく ―― しかし、今のビジネスだけに注目するのではなく、もっと広い視野を持ってインバウンドマーケティングに取り組む必要があるのではないだろうか。

2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される予定で、関連企業は急ピッチで準備を進めている。このイベントをきっかけに、訪日外国人旅行者が増加することはほぼ間違いない。

私たちは、どうすれば訪日外国人旅行者が日本での滞在を楽しめるのか、いい印象を持ってもらえるかということを、今後きちんと考えていかねばならない。いい印象、いい体験があれば、必ずリピーターになってもらえるはず。おもてなしの心で旅行者に接し、よりいい体験をしてもらいたいと思うことこそが、インバウンドマーケティングの本質なのかもしれない。