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コラム

観光庁が生成AIの活用への手引書を公開。 生成AIによって訪日観光客の行動と選択に変化はあるのか?

フランスや中東、AIで今後の成長を模索

2025年の世界経済は依然として不透明な状況が続いており、フランスや中東では成長率の下方修正が相次いでいます。フランス銀行は実質GDP成長率を前年比0.7%へと引き下げ、中国との貿易摩擦や欧州経済の減速が影響しています。また、中東では原油価格の変動が経済に不安定さをもたらし、情勢の緊迫化がアジア経済にも下押し圧力をかける懸念があります。こうした中、両地域はAI(人工知能)への巨額投資を進めることで、成長の突破口を見出そうとしています。フランスのマクロン大統領は今後数年間でAI分野に1,090億ユーロを投資すると発表し、中東でも脱石油依存の一環としてAIを国家成長の中核に据える動きが活発化。世界経済フォーラム(WEF)は、AIによって中東地域に2030年までに最大3,200億ドルの経済的利益が生まれると予測しています。こうした動きは、経済の不確実性が高まる中でも、イノベーションと技術投資を通じた新たな成長モデルの模索が本格化していることを示しており、今後の国際経済の行方においてAIが果たす役割はますます重要性を増していくと見られます。

 

インバウンドの分野における生成AIの可能性

世界銀行によると、AIの導入によって2030年までに世界経済は年間1.2%の成長が見込まれ、生産額で13兆ドルの増加が期待されています。教育、ヘルスケア、公共サービス、金融包摂など多岐にわたる分野でAIの利活用が進みつつあり、特にパーソナライズされた教育や医療従事者の負担軽減、効率的な行政運営など、社会的課題の解決にもつながる技術として注目されています。

こうしたAIの経済的恩恵は先進国だけでなく、新興国や地域経済にも波及効果をもたらすと期待されており、特に観光業やサービス産業が重要な収入源となる国々にとっては、AI活用が競争力強化のカギとなっています。例えば、AIによるデータ分析やパーソナライズされたサービス提供は、訪日観光客のニーズを的確に捉え、満足度の向上やリピーター増加につながる可能性が高まっています。

日本では、インバウンド需要が拡大傾向にあります。2024年の年間訪日外客数は36,869,900人で、前年比では47.1%増。また、直近の5月の訪日外客数は3,693,300人で、前年同月比では21.5%増とインバウンド市場は今後さらに注目される市場となるでしょう。観光庁は、DMO(観光地域づくり法人)や自治体、観光事業者向けに、「観光地・観光産業の生成AIの適切な活用に向けて」という生成AIの活用への手引書を公開。観光分野における生成AIの活用事例として、旅行者、観光産業、観光地に分けて紹介されています。訪日観光客を受け入れる地域や施設は、生成AIについて、指示(プロンプト)にしたがって自然な文章や画像などを生成できるメリットをもありますが、誤りを含む回答が生成する場合があることや、著作権保護の観点で問題ないかなど確認が必要です。生成AIは補助ツールとして使用し、人間による校正と判断をおこなう必要があるため注意が必要です。

訪日観光客を受け入れる地域や施設は従来のSEO(検索エンジン最適化)だけでなく、今後はAIがユーザーの希望を汲み取り、個々人の趣味嗜好を把握し、よりユーザー個人に希望にマッチした検索が可能になります。AIでのマーケティング分析にも注力することが、企業にとってもユーザー分析やターゲット確立の精度を高める重要な鍵となり、マーケティング戦略の再構築が求められるでしょう。

 

このコラムを書いた人

藤田(Fujita) プロフィール写真
藤田(Fujita)
グローバル・デイリー / 広報部
媒体部兼進行部の経験を経て、海外のプロモーション会社や出版社とのパートナーシップを築いてきた。各国のトレンドや需要を抑えながら、企業のニーズに沿ったインバウンドプロモーションについて長年にわたり従事。

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