韓国|訪日旅行イシュー、データで見る真相は? その②:旅行データと地方観光
前編よりつづく…
2019年7月のインバウンド市場において最も熱いイシューと言えば、連日の報道で皆さんご存知のとおり、訪日外国人数TOP2の国である「韓国」との関係による影響とともに「今後はどうなるのか?」ではないでしょうか。
その経緯や背景はさておき、波及効果として今、韓国内で起きている様々な動きについて、現地の旅行関連メディアによるデータ分析をもとにチェックしてみたいと思います。
その②旅行データと地方観光の真相
引用:韓国中央日報
格安航空券を販売する、韓国のソーシャルコマース(EC)サイト「TMON」が集計した、航空券予約ランキングの推移を見ると、韓国の訪日主要都市である「大阪」「福岡」「東京」の順位が、7月に入ってから下落を続けている様子がわかります。
中央日報の報道によると、旅行業界20年以上の関係者は「1998年のIMF(救済金融)期と2009年のリーマンショック期を除いて、短期間でこれほど右方下がりの推移はなかった」とし、「業界全体で8~9月の日本旅行予約率は60~70%ほど落ちている」と語りました。
航空券だけではなく、ホテルやアクティビティなどのパッケージ商品を販売する旅行会社のキャンセルも相次いでいます。7月1日以降の韓国上位6社の日本旅行パッケージ商品のキャンセル率を見ると、少ないところで48.5%、多くは80%も発生していおり、平均63.3%のキャンセル率となっています。
新規予約も状況は同じで、昨年同期に比べ6割を下回っているとのこと。
問題は、これらのパッケージツアーの半数以上が、日本の地方都市がデスティネーションであることで、訪日リピーターの急増とともに始まった、LCC(格安航空会社)各社が競争的に日本の地方空港に就航する「ローカルラッシュ」から、今は運休や路線廃止などの動きを見せています。これは今回の措置の影響と無関係とはいえません。
このような地方便の減少によるパッケージ旅行商品の不振は、インバウンドで地方創生を試みる「DMO」政策にも大きな悪影響を与えることになります。九州や中四国、北海道、沖縄など、訪日韓国人の割合が30%以上を占め、観光が町の財源となっている各県・市町村にとっては、この状況が長期化することに不安を抱いており、やっと知名度が上がり手ごたえを感じているローカルエリアにとっては、インバウンドに対するモチベーションの低下にもつながります。
今回の日韓関係、現時点では回復の目途はまだ霧の中で、韓国内の不買運動も過去に類を見ないほどエスカレートしている中、「旅行に行かない」というアクションは、訪日旅行が「誰も強制はしないけど、うしろめたくて踏み出せない」イメージになってきています。
わずか1年後に、世界平和の祝典・オリンピックを控える国と、その隣国の関係が悪化の一路をたどっている今日この頃ですが、政治的・経済的な不調和の矢先が、人と人との交流のきっかけでもある「旅行」という領域まで戦場と化していることは、この業界に携わる人々にとっては残念であり残酷な現実でもあります。相互にとって得することのないこの対立が、最小限のダメージで解消されることを願いたいです。