考察|世界は今「オーバーツーリズム」にうなされ中?(上)
訪日外国人が3000万人を突破し、今もなお右肩上がりの増加を見せるインバウンド市場。その成長の反作用として「オーバーツーリズム」の問題が、日本の各地にてイシューとなっています。これは、観光大国と言われる世界の国々でも大きな課題として認識されています。
「オーバーツーリズム」という言葉は、2012年、イギリス・マンチェスター大学のハロルド・グッドウィン教授が、観光で苦しむヨーロッパの各都市の問題を診断する自身のブログにて初めて使用されました。その後、急激に観光客が増えた世界の各所にてこの問題が拡散し「ツーリズムフォビア(Tourism phobia:観光恐怖)」とまで表現されるようになりました。
収容の限界を超える観光客が特定の観光地に押し寄せ、地域住民とのトラブル、交通渋滞、過剰な人混みによる混雑、トイレなど公共施設の不足、ゴミ問題、騒音、環境破壊までも及ぼす、このオーバーツーリズム問題に対し、各国の観光地はどのようなソリューションをもって改善をしているのか、その事例を探してみました。
①美しいヴェネチアを守る具体策
Photo:Twitter
「水の都」で有名なイタリア・ヴェネチア。
クルーズ旅行でイタリアの代表的観光地となった今、増えすぎた観光客に地元住民が反発し「VENEXODUS(ヴェネチアに来るな)」の掛け声のもと、大型豪華客船が港に近づくのをボートで阻止する海上デモを行うまでの事態に至りました。
観光客によるゴミや悪臭問題も絶えず、このままでは観光地としても、生活拠点としても崩壊してしまうと判断した政府当局は、まず観光船のルート変更を行い、特定の曜日・時間帯に観光客の訪問を制限、ピーク時には路上にもゲートを設置、地元住民の通行を優先させる措置を取りました。併せて、主要スポットであるサンマルコ広場には案内員を配置し、階段での飲食、騒音や落書きなどの行為を規制するようになりました。
②バルセロナをシェアしよう
1992年のオリンピック開催を機に観光都市として開発始まったスペイン・バルセロナ。
人口160万人の都市に毎年約3000万人もの観光客が訪れ、地元住民たちは騒音や民泊などによる家賃の高騰、ごみの不法投棄などで「観光恐怖症」になり、観光客に対する嫌悪感をあらわにする壁書きを張ったり、観光バスを既存するなどの行為が横行しました。
このような問題が続くと、2015年に就任したアダ・コラウ市長は「バルセロナをきれいな街に再生させる」と宣言し、公務員、学校、地域住民にて構成された観光委員会を発足し、宿泊料などを通し観光客が改善の費用一部を負担させる「観光税」を徴収するほか、歴史地区での新たな商業施設等の開設を禁止したり、伝統市場「ボケリア」には団体観光客の入場を制限するなどの施策と同時に「バルセロナをシェアしよう(Let’s share Barcelona)」というキャンペーンを通し、ポイ捨てなどの迷惑行為をなくすための啓蒙をするなど、観光客と住民が共存できる方法を模索しています。
-下編につづく