
中国におけるハイキングシューズ市場の最新動向
近年、健康志向の高まりとともにアウトドア活動が世界的に普及する中、中国では特に「ハイキング(徒步)」の人気が急上昇しています。自然と触れ合いながら身体を動かせる気軽さが支持され、都市部の若者や会社員を中心に、幅広い層に浸透しています。SNS上でも登山・ハイキング関連のコンテンツが日々話題を呼び、関連商品の関心も高まる中、ハイキングシューズはその中心的存在として確かな需要を獲得しています。
本文では、中国登山靴市場の現状とトレンドを深掘りし、日本ブランドの中国市場における人気、さらには訪日中国人観光客の購買動向と、それに即した効果的なプロモーション提案までを一気に解説いたします。
1.中国ハイキングトレンド背景
ハイキングが中国で人気を博す理由のひとつは、その「始めやすさ」にあると思います。特別な技術や道具を必要とせず、手軽に自然を満喫できることから、会社員や学生層を中心に裾野が広がり続けています。
実際、2025年に広東省佛山市で行われた「50キロ徒步チャレンジ」には過去最多となる約45万人が参加しました。この規模からも、中国社会におけるハイキング文化の根付きと参加熱の高さが伺えます。
出典元:佛山在线
2.SNSから見るハイキング人気
中国のアウトドア熱を語る上で、SNSの存在は欠かせません。微博(Weibo)や抖音(Douyin)、特に若年層・女性層に人気のREDでは、登山やハイキングに関する情報発信が非常に活発です。
例えば、2025年上半期のREDでは、
- 「#ハイキングシューズ(徒步)」の投稿閲覧数が30.4億回、
- 「#アウトドアハイキング(户外徒步)」が60.3億回、
- 「#一日ハイキング(一日徒步)」も1.7億回を超えており、
中国におけるハイキングが一過性の流行ではなく、ライフスタイルの一部として定着しつつあることが読み取れます。

RED|ハイキング関連#tag閲覧数例
さらに、
- 「#ハイキング仲間コミュニティ(徒步圈)」は3.1億回、
- 「#ハイキング一緒に行く相手(徒步搭子)」は1.2億回の閲覧を記録しており、
ハイキングが「社交活動」としても注目されている点が特徴的です。
RED|ハイキング関連投稿例
出典元:投稿1 投稿2 投稿3
都市ごとの人気傾向も顕著で、
- 「#杭州ハイキング(杭州徒步)」は1.4億回、
- 「#北京ハイキング(北京徒步)」は9378.5万回、
- 「#重慶ハイキング(重庆徒步)」も8544.3万回閲覧数と、
地域を問わず全国的にブームが広がっているのがわかります。
この流れの中で、ハイキングシューズやリュック、ウェア、防水アイテムなど、関連アイテムへの注目も高まっています。実際、
- 「#ハイキング装備(徒步装备)」は3.4億回、
- 「#ハイキングコーデ(徒步穿搭)」は4.3億回、
- 「#本格装備ハイキング(重装徒步)」は1.8億件の投稿と、
装備に関する関心の高さもデータに裏付けられています。
RED|ハイキング装備関連投稿例
出典元:投稿1 投稿2 投稿3
出典元:RED公式, 検索日25年7月11日
3.ハイキングシューズ市場現状
このようなハイキングブームを背景に、中国のハイキングシューズ市場は急成長を遂げています。ECにおいてもハイキングシューズの販売量は年々増加し、アウトドア用品カテゴリーの中で最も勢いのあるジャンルの一つとなりました。
2024年には、国際的なアウトドアブランドの中国進出が相次ぎ、HOKAやSalomonといったブランドが、これまで得意としていたトレイルランニングに加えてハイキング領域にも注力し始めています。
特に注目すべきは、ディカトロンの公式発表によれば、2024年の「山地ハイキング成人用靴(山地徒步成人鞋類)」部門での売上が前年から50%以上増加し、同社の装備カテゴリ全体でも20%以上の成長を記録したことです。
アウトドア需要の拡大に伴い、ハイキングシューズをはじめとする衣類、帽子、UV対策、アイウェア、アクセサリー類もまた「次の成長市場」として、ブランド各社から熱視線を集めています。
出典元:精练Gymsquare
4.日本ブランドの存在感とSNS上の注目
1. 日本のハイキング&ハイキングシューズの人気理由
日本は四季折々の自然を活かしたハイキング文化が根付いており、景色が綺麗で、日本マーケでも関連商品が充実していることから、ハイカーから高い評価を受けています。
こうした文化的背景と製品の実力が相まって、montbellやKEENといった日本ハイキングシューズブランドも注目されています。
2. REDデータからみる日本ハイキングシューズの人気
2025年上半期(1月1日〜6月30日)のRED投稿データを見ても、日本でのハイキングや日本ハイキング製品は既に人気を獲得しています。
- 「日本ハイキング(日本徒步)」に関する投稿数は1.76万件で、推定読了数は5759万回
- 「日本ハイキングシューズ(日本徒步鞋)」も総閲覧数167万回超、いいね数は4.19万回、保存数2.7万回
特にブランド別で見ると、
- KEENに関する投稿数は9536件、推定閲覧数2177万回超
- montbellについても3379件、推定閲覧数955万回以上
これらの数値からも、REDを中心としたSNS上で日本ハイキングシューズへの信頼と関心が確実に高まっていることが分かります。
5.消費者が登山靴に求める6つのポイント
SNS分析から読み取れる中国の消費者は、以下の機能を求める傾向があります。
- 防滑性能:山道や雨天時の安全性確保のため、滑りにくさは最優先事項とされています。
- 快適性:長時間歩行を想定した靴の包み込み感、クッション性、インソールの柔らかさへのこだわりが見られます。
- 防水性:突然の天候変化にも対応できるよう、防水素材の使用が評価されています。
- 通気性:長時間の運動で汗をかきやすいため、ムレを防ぐ素材や構造も重要視されています。
- 軽量性:軽量化によって歩行時の疲労感を抑える設計が人気です。
- 耐久性:ソールの素材や構造が耐摩耗性に優れているかも、購入判断の大きな基準となっています。
※上記六点はGLD独自Web調査で、計1000件SNS公開投稿を統計結果。
6.訪日旅行者に向けたマーケティングTips
1. 日本ブランドの信頼性と技術力を訴求
訪日中の消費者に対しては、日本ハイキングシューズが誇る品質や技術、ブランドストーリーを前面に打ち出すことが効果的です。素材の選定や製造工程のこだわりなどを丁寧に伝えることで、安心感と特別感を醸成できます。
2. 消費者のニーズに応える表現
上記のような具体的な機能訴求に加え、実際の利用シーンを想定したストーリーテリングや、比較動画・レビューを通じた説得力のあるアプローチが望まれます。
3. 日本のハイキング文化との融合
例えば、熊野古道や上高地といった代表的な日本のハイキングスポットと組み合わせて製品を紹介することで、文化と商品を結びつけた印象深い体験を訴求できます。
おわりに
中国では今、ハイキングが「趣味」から「日常的なライフスタイル」へと進化し、それを支えるハイキングシューズ市場もかつてないほどの活況を呈しています。日本ブランドは、その品質の高さと洗練されたデザインを武器に、今後ますます存在感を高めていくことが期待されます。
訪日旅行という「体験」に乗せて、日本のハイキングシューズを中国市場に印象づけるチャンスは今まさに到来しています。マーケティング戦略を練り直し、より多様化・個性化する消費者のニーズにしっかりと応えることで、中国インバウント市場での成功はぐっと現実味を帯びてくるはずです!
GLDでは、クライアントのご要望に応じて、具体的な調査分析からメディア戦略のご提案まで柔軟に対応しています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
このコラムを書いた人

グローバル・デイリー / 海外消費者リサーチ・トレンド分析担当
アジア各国の“今どき”消費動向や人気商品のヒット要因を日々ウォッチ。 SNS分析や現地メディアの調査、商談現場の声などをもとに、インバウンド施策や越境マーケティングに役立つ情報をお届けします。 「実際に、現地でウケている理由は?」「数字の裏にある文化背景は?」──そんな疑問にこたえる視点を大切にしています。
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