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コラム

日本酒の輸出市場、2025年600億円規模の可能性


日本酒酒造組合によると、2024年度の輸出実績は総額434.7億円(2023年比105.8%)、数量3.1万kL(2023年比106.4%)となり、ともに2023年を超える結果になりました。2024年12月に日本酒や焼酎、泡盛といった日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあり、海外でも日本酒の注目度は高まっています。また、国税庁によると、日本酒を含む酒類のブランディングやインバウンドによる海外需要の開拓等、日本産酒類の海外展開に向けた取組を支援や国際イベント等でのPR、販路拡大における国税庁の令和7年度の予算は21.5億円と昨年度の15.9億円から大幅に予算を挙げて取り組む姿勢をみせています。今後も日本酒の需要はますます高まっていくと考えられます。

現在、日本酒の輸出に対する国別の割合は中国、アメリカ、香港が65%と大きなシェアを占めている一方で、韓国やイギリスなどでの成長が注目されています。この傾向にはいくつかの理由があります。

韓国の酒文化との親和性
韓国では「焼酎」などの蒸留酒が人気ですが、近年では健康志向が高まり、アミノ酸やビタミンB群、ミネラルなどの栄養素が含まれており、これらが美容や健康志向の方に日本酒が好まれるようになってきました。韓国は美意識の高い人が多く、美容効果の高い日本酒としてアピールすることもひとつのPR手法ではないでしょうか。

日本酒の輸入単価の上昇
韓国における日本酒の輸入単価が上昇している点は特筆すべきです。品質の高い日本酒への需要が増加していることを示唆しています。韓国では近年、高級寿司の人気が急上昇しており、これが日本酒の需要に大きな影響を与えています。寿司と日本酒のペアリングを楽しむ文化が根付きつつあり、その影響で飲食店での日本酒の販売が伸びている状況です。これにより、日本酒の品質や価格帯に対する認識も変わり、韓国市場でも日本酒が高級アルコールとしての地位を確立しつつあります。

イギリスでの日本酒の需要
日本の伝統的な酒造りがユネスコの無形文化遺産に登録され、日本酒をはじめとする日本産酒類に対する国際的な評価を一層高めました。特に、こうじを使った日本酒、焼酎、泡盛といった日本独自の酒造技術と文化が注目され、世界中でその魅力が広まりつつあります。
日本酒においても、スパークリング日本酒を含む新しい商品カテゴリーが成長しています。スパークリング日本酒は、その独特の風味や飲みやすさが受け、特に若い世代を中心に人気を集めています。また、「日本産酒類」をテーマとしたイベントが複数、開催され日本酒をPRする機会が多かったことも起因しています。オフラインイベントが今後国内外イベントでも開催されることが考えられるため、プロモーションの場は今年も数多くあるでしょう。

今後の日本酒の輸出市場は順調な成長が見込まれる予想されます。2025年の政府目標である600億円の達成については、中国による輸入規制の関係で困難な可能性が高いとしたものの、2024年の記録を超える予測がたてられています。また、日本酒は、現在輸出相手国は過去最高の80ヵ国にのぼっています。韓国やイギリスであげたような需要増加の要因を参考にしながら、今後さらに多様化したマーケットに対応して、現在あまり日本酒が浸透していない国へのアプローチが鍵となるでしょう。

参考資料:
日本酒造組合、2024年度の日本酒輸出データを発表…韓国が29%増:SOMMELIER TIMES
2024年度日本酒輸出実績は金額・数量共に前年度越え、輸出額434.7億円(昨対比:105.8%)/輸出量3.1万㎘(昨対比:106.4%):日本酒酒造組合 
「日本産酒類」が注目される英国、オールジャパンでの認知度向上を:JETRO
日本産ウイスキーやハイボールが人気、焼酎への期待も(韓国):JETRO
インバウンド消費含む日本酒の輸出市場は1,000億円規模へ:2024年度日本酒輸出総額記者発表会:訪日ラボ