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五輪開催年の「クラウディングアウト」JNTOが対策へ


▲出典:2019年7月10日 東京の観光振興を考える有識者会議

東京オリンピック・パラリンピックの開催年であり、政府が目指してきた訪日外国人旅行者数4千万人の目標年次である2020年。近年の開催国の事例として、観戦客の上積みは見込めるが、その年には外国人旅行者数が鈍化、減少する傾向があります。
2012年・ロンドン五輪開催国だった英国は、戦略的なインバウンドプロモーション施策を展開し、認知度向上などの成果を上げた反面、開催年度の外国人旅行者数自体は3018万人で、前年比0.9%増にとどまり、大会期間を含む7~9月は、前年同期比4.2%減を記録しました。

このような「クラウディングアウト(Crowding-Out)現象」に対し、日本政府観光局(JNTO)が対策に乗り出しています。クラウディングアウトとは、直訳すると「押し出す」という意味で、特定分野への需要の増加が他の分野への需要を減少させてしまうことを指しています。

五輪開催年に外国人旅行者数が鈍化、減少する要因としては、五輪観戦を目的とする旅行者分はプラスでも、五輪観戦に関心のない他の旅行者は、交通機関や宿泊施設の手配の難しさ、混雑、費用の高騰を嫌って減少するためとみられており、個人旅行だけでなく、旅行会社経由の旅行への影響も懸念されます。
理由としては、訪日旅行を取り扱う旅行会社が東京抜きの旅行商品は販売が難しいとして大会期間中の商品造成を回避する傾向があるからで、訪日需要の分散とともに東京だけなく地方への旅行者も減少してしまう恐れがあります。

JNTOは、クラウディングアウトへの対策として、下記のような対策を計画しています。

(1)東京観光を希望する旅行者には客室が比較的確保しやすく、鉄道フリーパスなどを使えば短時間でのアクセスが可能な東京近郊の宿泊施設を提案する「周辺都市への宿泊分散」
(2)訪日リピーターなどには、東京以外の地方の魅力を訴求する「訪日旅行の地方分散」
(3)事前の周知で大会前後の時期に誘導する「訪日旅行の時期分散」―を挙げている。ターゲットなどに応じて分散を促すプロモーションを実施

これらのの分散対策に加え、2020年限定の積極的プロモーションで訪日需要を喚起する必要性を指摘しています。
JNTO企画総室の金子正志総室長は「『どうしても2020年に日本に行かなくては』と思わせるプログラムを作る必要がある」と述べており、訪日客にとって特別感、お得感のある20年限定の特別プログラムの提供を鍵に挙げ、観光庁と連携のもと、9月からDMOや観光関係の団体・事業者に20年限定の特別プログラムを検討するよう依頼を始めています。