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考察|世界は今「オーバーツーリズム」にうなされ中?(下)

Column20190626 (4)

上編より続く

訪日外国人が3000万人を突破し、今もなお右肩上がりの増加を見せるインバウンド市場。その成長の反作用として「オーバーツーリズム」の問題が、日本の各地にてイシューとなっています。これは、観光大国と言われる世界の国々でも大きな課題として認識されています。

上編に続き、世界各国の観光地におけるオーバーツーリズムへの取り組みを考察してみましょう。

③アンデスの自然を守るための制限
Column20190627
多すぎる観光客の訪問、特に自然景観が資源となる観光地にとっては、環境の破壊が観光コンテンツの崩壊というリスクになるとともに、未来の世代がその体験を奪われることにもなります。

このように、自然景観の保存が重要な観光地の場合、訪問客の総数制限を行うこともあります。南米のペルーは、アンデス山脈に沿ってマチュピチュへとつづくハイキングコース「インカトレイル」の利用者数を、1日500人、マチュピチュの訪問客は1日2,500人に制限しています。

④観光地であり住宅街でもある韓屋村伝統地区への配慮
Column20190627 (2)
韓国・ソウルの「北村(ブクチョン)韓屋村」は、韓国の伝統家屋である「韓屋(ハンオク)」が密集する伝統地区で、今でも住宅街として一般住民が生活をしているエリアです。ここには1日に国内外約1万人の観光客が押し寄せ、住民の許可なく敷地に入ったり、ベルを押したりする問題で住民たちとのトラブルが絶えませんでした。これを改善すべく、管轄区役所は、平日と土曜日の10時から17時までの間のみ観光客を受け入れることにし、旅行会社に協力を呼びかけるほか、イベントなどのPR活動を通し観光客にも告知を進めています。

日本でも、民間の私有地が観光客によって侵害されるケースが多く、飛騨高山の白川郷や北海道の美瑛などでは、生活の拠点である家屋や農地が、所謂「インスタ映え」のスポットであるがゆえに、ベストショットを撮るために観光客が無断で踏み入り、生活に支障を来す問題に対し、村人たちが自らクラウドファンディングを通し、多言語のガイドブックを作ったり、観光客とコミュニケーションがとれる看板を立てるなど、解決のための努力をしています。

オーバーツーリズムが世界的に注目を集め、解決策を考える中、逆の発想で観光のあり方を捉えるのが「アンダーツーリズム」です。静かでのんびりしたところだからこそ楽しみがたくさんあり、混雑した都市よりおすすめ、とアピールしています。
この考え方は、規模は拡大するが、まだまだ大都市圏や主要スポットに集中する今の日本のインバウンド環境において、地方観光の可能性を示唆するもので、打ち出し方次第では、加熱する観光エリアの分散効果とともに「オーバー」する恐れのない、サスティナビリティを持った新しい訪日デスティネーションとしてのポテンシャルを期待できそうです。