訪日客最多 15年1973万人 消費額、7割増の3.4兆円 中国客依存に危うさも
日本政府観光局(JNTO)が19日発表した2015年の訪日外国人客数(推計値)は前年より47%多い1973万人となり、過去最高を記録した。増加は4年連続だ。円安を追い風に中国からの訪日客が急増したのが大きい。観光庁が同日発表した15年の訪日客の旅行消費額も同7割増の3兆4771億円で過去最高となった。ただ中国経済の減速で16年は訪日客やその消費額は伸び悩みそう。中国頼みの危うさも明らかになってきた。
石井啓一国土交通相は19日の閣議後の会見で、「16年の訪日客数は2000万人を超える期待があるものの、伸びは少し穏やかになるのではないか」と指摘。「中国経済の先行き不透明感が増しつつあり、訪日客数や消費額への影響を注視する必要がある」と語った。
政府は東京五輪が開かれる20年に訪日客を2000万人とする目標を掲げる。15年の実績は、この目標にほぼ手が届く水準となった。
国・地域別では中国からの訪日客が14年の2倍強の499万人に急拡大した。韓国からは45%増の400万人、台湾からは30%増の367万人とアジア地域からの客数増が目を引く。円安に加え中国の場合は15年1月にビザの発給要件を緩和したことも寄与した。米国からの訪日客は16%増の103万人。
菅義偉官房長官は19日の閣議後の記者会見で、「ビザ緩和などを行った規制改革の成功事例だ。さらなる大台をめざしていきたい」と述べた。訪日客数以上に消費が伸びたのは、消費税の免税制度の拡充などの効果もあったとみられる。
東京・銀座地区など多くの地区では「訪日客頼み」の様相が強まる。三越伊勢丹ホールディングスによると、三越銀座店(東京・中央)では売上高のうち、訪日客向けの免税品の売上高が約25%を占め、その6割超は中国人の購入だという。
ただ中国の株式相場の急落もあり訪日客の消費に一服感も出始めた。15年前半は前年同月比で数倍あった免税取扱高が昨年12月は同1.3倍にとどまり「若干減速している」(日本百貨店協会の井出陽一郎専務理事)。
一方、15年の日本人の出国者数は4%減の1621万人と45年ぶりに訪日客数を下回った。円安で海外旅行を敬遠する動きが出たほか、北陸新幹線の開業効果などで国内旅行が堅調だった。
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