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コラム韓国

2026年、韓国人は「短い休暇」でどこへ行くのか

2026年の韓国では、現時点で公表されている祝日と代替休日をもとに試算すると、週5日勤務の場合、カレンダー上の休日が約118日になるとされています。日数だけを見れば例年と大きく変わりませんが、旅行業界にとっては大きな転換点になる可能性があります。

なぜなら、7日間以上の大型連休が一つも予定されていないからです(今後、政府が臨時公休日を指定した場合は変わる可能性があります)。

2026年韓国祝日カレンダー

振り返れば、2025年の秋夕(チュソク)連休は最大10日間の黄金連休となり、仁川空港は過去最高の利用者数を記録しました。こうした長期休暇があれば、欧米への長距離旅行も活況を呈します。

しかし2026年は状況が異なります。3日以上の連休は8回あるものの、7日以上の大型連休はありません。

これは何を意味するのでしょうか。韓国人旅行者は「短い休暇で行ける近場」を選ぶようになると考えられます。つまり、長距離旅行(欧米)から短距離旅行(日本・東南アジア)へのシフトが起きる可能性があるということです

Terminal 1 at Incheon International Airport is bustling with travelers on the 1st ahead of the Chuseok golden holiday. Incheon International Airport Corporation expects this year’s Chuseok holiday to draw the largest crowds among peak seasons on record. /Courtesy of 뉴스1

出典:Chosun Biz EN 

航空業界はすでに動き出しています

この変化を、韓国の航空業界はすでに先取りしているように見えます。

2025年11月、仁川国際空港公社は日本行き定期路線が31路線に拡大したと発表しました。これは成田空港(18路線)や伊丹空港(26路線)を上回る規模です。2025年だけでも帯広・茨城など、複数の新規路線が開設されました。

さらに注目すべきは、国土交通部が確定した2025年冬季スケジュール(2025年10月26日〜2026年3月28日)です。国際線の運航便数は週4,973便となり、コロナ前の2019年水準(週4,980便)にほぼ回復したと発表されています。

ここで重要なのは、各航空会社の戦略転換です。欧米などの長距離路線の拡大は限定的で、日本・ベトナム・台湾など近距離路線に集中していると報道されています。

具体的な動きを見てみましょう。

大韓航空は冬季スケジュールで、北海道・九州など韓国人旅行者に人気の地方路線を中心に増便すると発表しました。成田〜済州路線、長崎〜仁川路線などが増便され、札幌・熊本・鹿児島路線も強化されています。

エアロKは11月から仁川〜帯広路線(週2便)、仁川〜茨城路線(週3便)の運航を開始しました。

これらの動きが示すものは明確です。 「韓国人観光客は確実に日本に来る。そのためのインフラはすでに整っている」ということです。

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「N次旅行者」が地方都市へ分散しています

さらに興味深いのは、増えた韓国人観光客がどこに向かっているかです。

韓国メディアの報道によると、2025年第3四半期(7〜9月)、仁川空港発の日本地方都市路線では、松山、静岡、高松、広島、熊本といった都市が利用客数の上位を占めました。

これは、すでに東京や大阪、福岡、札幌、名古屋といった大都市を何度も訪れた「リピーター層」が、新たな目的地を求めて地方都市へと広がっている現象だと考えられます。韓国ではこうした層を「N次旅行者」と呼び、N回目以降の訪日で新しい地域を開拓するリピーターを指します

韓国人の訪日リピート率は非常に高く、一度日本を訪れた人の多くが再訪する傾向にあります。そして、彼らは毎回同じ場所には行きません。

仁川空港の日本路線ネットワークを見ると、主要6都市(東京・大阪・名古屋・福岡・札幌・那覇)を除けば、残りの約25路線はすべて地方都市です。帯広、茨城、静岡、松山、高松、徳島、熊本、宮崎、大分、佐賀、鹿児島、長崎、石垣島、下地島…。

韓国人観光客は、「日本人もあまり行かない場所」まで足を運ぶ、数少ない外国人なのかもしれません。

愛媛県松山市道後温泉

地方自治体の取り組みが成果を上げています

この流れを的確に捉えている地域も出てきています。

愛媛県(松山) はその成功例と言えるでしょう。韓国メディアによると、愛媛県は韓国人観光客向けに、空港〜市内シャトルバスの無料提供や、主要観光地の入場券・クーポン配布などの施策を展開してきました。

その結果、エアプサンは松山路線を週3便から毎日運航にまで増便し、第3四半期の仁川〜松山路線は5万人を超える利用客を記録しました。日本地方都市路線の中でもトップクラスの人気です。

熊本 も注目すべき事例です。大韓航空は2024年11月から、27年ぶりに仁川〜熊本路線を毎日運航で再開しました。

静岡 では、済州航空が1日1往復から1日2往復に増便し、搭乗率は約70%を記録しています。富士山を間近で見られる旅行先として人気が高まっているようです。

これらの事例が示すものは明確ではないでしょうか。 「韓国人観光客に特化したサービスを提供すれば、成果が出る」ということです。

静岡県浜松市天竜浜名湖電車

情報発信という課題

航空インフラは整いました。韓国人観光客は地方に来る準備ができています。愛媛県のように受け入れ体制を整えた地域は、すでに具体的な成果を上げています。

一方で、「情報発信」の面ではまだ課題が残ると思います。

韓国人旅行者が旅行先を選ぶ際、参照するのは韓国語のWebサイト、SNS、旅行メディアの記事、ショート動画などです。つまり、観光客が来るかどうかは、「知られているかどうか」に大きく左右されます。

愛媛県の成功要因は、シャトルバス無料化などの施策だけではないと思います。その情報が韓国語で、韓国人に届く形で発信されたことで、「松山」という選択肢が旅程のテーブルに上がった側面もあるでしょう。

多くの地方自治体が「うちには観光資源がない」と口にします。しかし実際には、「ない」のではなく「届いていない」だけというケースも少なくありません。

2026年に向けた動き

2026年、韓国人旅行者は「短い休暇で行ける近場」を求める傾向が強まると予想されます。航空会社はすでに日本の地方路線を増便しており、N次旅行者たちは次の目的地を探し始めています。

この流れは、日本の地方都市にとって大きな機会になると思います。

ただし、観光客は「知っている場所」にしか行けません。届かなければ、選ばれません。

韓国人旅行者に届く情報発信——現地の魅力を伝える記事、SNSで目に留まるショート動画、「行ってみたい」と思わせるビジュアル。こうしたコンテンツを、韓国人の目線で、韓国語で、届くチャネルで積み重ねていくことが、今後ますます重要になると思います。

出典

このコラムを書いた人

金 プロフィール写真

グローバル・デイリー / 広報部
韓国出身。旅行業やマーケティング会社の運営を通じて、インバウンドに関わる企画・販売・情報発信まで幅広く携わってきた。 実務で培った視点をもとに、現在は自治体や企業向けに、海外向けコンテンツの制作やセミナーを通じて、インバウンド施策を支援している。

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