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上海圏に日本旅行ブーム 訪日中国人の4割超 人気の理由は?

上海で全長347メートルの豪華客船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」に家族とともに乗り込んだユィ・チフォンさんは、子供たちに日本は良くないとたびたび話していたことを認めた。

だが45歳のセールスマンであるユィさんが、それを理由に東シナ海を航海し日本を訪れる旅行を取りやめることはなかった。旅行前に「日本人は親切で人柄も良い。われわれは両国の歴史を尊重すべきで、私が腹を立てているのは日本政府に対してだけだ」とユィさんは述べた。


博多湾を航行する豪華客船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」=7月24日(ブルームバーグ)

今年の中国からの訪日旅行者数は、昨年実績から3分の2増え400万人に達する見込みだ。上海の日本総領事館によれば、日本に昨年やってきた中国人の4割以上は上海圏からの旅行者。北京は日本の査証(ビザ)取得の約4分の1だったという。

円安で日本への旅費が減ったことや韓国での中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス流行が、中国人観光客急増の要因だ。東シナ海の尖閣諸島(沖縄県石垣市)を日本政府が国有化したことで悪化していた日中の外交関係も好転しつつあり、中国の習近平国家主席と安倍晋三首相はようやく会談に至った。

だが上海からこれほど多くの人が日本を訪れる理由については、あまりはっきりしていない。上海師範大学で対日関係中心に歴史を教える蘇智良教授は、中国東部の商業の中心地である上海には実用を重視しコスモポリタン的な雰囲気があると説明する。前世紀の植民地主義において支配される側の中心的な都市だった上海は、海外との関係が深いという。

蘇教授は「日本の力と文化、人々が交差する最も早期かつ恐らく最も重要な舞台となったのが上海だ」と指摘し、1980年代後半の学生交流にも言及。その上で、今回の日本への旅行ブームで「政治的緊張が全てなくなり、乗り越えられたわけではない」と語った。(ブルームバーグ Ting Shi、Amanda Wang)