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経済効果、20年に8兆円試算も

訪日外国人数の急増は国内経済に大きな効果をもたらしてきた。三菱総合研究所の試算によると、インバウンド消費がもたらす日本経済への波及効果は生産増も含めると2013年で約3兆5000億円に達した。人民元急落の影響は未知数だが、政府は20年に14年と比べて2倍にあたる4兆円のインバウンド消費を目指している。実現できれば日本経済に8兆円超の効果をもたらすとみられる。

財務省によれば15年1~10月の旅行収支は比較可能な1996年以降で最高の9058億円の黒字に達した。訪日外国人数が年3000万人になれば旅行収支は4兆円の黒字になるとの試算もある。逆風の中ではプラス効果を持続するには2つのポイントがある。

1点目は訪日客増加の維持だ。20年に2000万人という政府目標は前倒しの達成が確実だが、外国人の訪問数を国際比較すると依然として低い。中国やタイは13年時点で2000万人を超えている。5000万人近い首位スペインに遠く及ばず、16位にとどまっている。

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増加維持のヒントは日本に来た外国人の不満にある。長野県の温泉を訪れたオーストラリア人の20代女性は「自分の預金口座から現金を引き下ろしたいが、対応ATMがあるセブン―イレブンが近くになくて不便」と困惑の表情を浮かべる。地方では移動中に外貨対応のATMを探しづらく、この点が企業にはビジネスチャンスだ。セブン銀行(8410)は全国のコンビニエンスストアや商業施設で対応ATMを2万2000台以上設置し、外国人にも認知度は高い。

宿泊施設の整備も必要になる。訪日客の約6割は東京や大阪、名古屋など大都市に泊まる。ただ稼働率は15年10月時点で東京は85%、大阪は87%とすでに飽和状態だ。

2つ目の重要な点は観光収入の引き上げだ。外国人の観光で稼ぐのは米国やスペイン、フランスで、世界銀行の13年の統計によればこうした国々の国際観光収入(ドルベース)が多い。ベストテンにはタイや香港が入るが日本は圏外だ。観光にお金をかける国から呼び込む工夫が求められる。

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国連世界観光機関(UNWTO)によれば、人口1人あたりの観光支出が多いのはドイツやオーストラリア、カナダなど。14年の訪日外国人の年間旅行消費額を見ると、中国や台湾、韓国といったアジア諸国・地域が半分以上を占める。旅行でお金を使う人々を呼び込む施策が欠かせない。

1つの手段は国際会議の誘致で一度に多くの訪日客を招く施策だ。例えば世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)開催で知られるスイスは国際機関や企業の会議や国際見本市の誘致に積極的だ。13年時点では観光客数こそ日本より下だったが、観光収入は日本を上回った。国際会議の開催件数は米国が首位で、日本はイタリアに次ぐ7位。都市別でみても国内で最も多い東京は22位にとどまる。

世界では観光産業が国内総生産(GDP)に占める割合が平均9%と言われる(国連世界観光機関調べ)。日本に当てはめて単純計算すると50兆円規模になる。現状では日本の場合、GDPの1~2%にとどまるとされ、工夫次第では伸びしろが大きい。