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2019.10.01東アジア|歌・ドラマ・映画…アーティストがインフルエンスする「国をまたぐ影響力」

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▲Image by A-Sketch MUSIC LABEL

インバウンドプロモーションにおいて、東アジア向けの口コミ拡散は、類似する文化的背景が有利に作用することがあります。特に「中華圏」は、言語(文字やニュアンスは異なりますが)の共通点も持っているので、波及力が大きくインフルエンサーの知名度によっては幅広いセグメントの人々に訴求できます。
最近では「KOL(Key Opinion Leader)」や「網紅(ワンホン、インターネットスター)」と呼ばれる、ウェブを中心とするインフルエンサーが、コスメ商品や観光施設などのインバウンドPRに活用されていますが、中華圏を超え、アジア全般における波及力を持つのは、音楽や映画、ドラマなどマスメディアにて活躍する「芸能人・アーティスト」ではないかと思います。

過去との違いは、彼らもSNSや動画プラットフォームなどを活用し影響力をウェブにも拡張しているということ。ただ、そんな彼らをプロモーションに活用するには、その影響力の大きさから、天文学的なコストがかかるのは当然であり、実施できるのは大企業や広告PR効果が売上に直結する業種くらいであるのも事実です。
でも、時にはこの高嶺の花のような芸能人・アーティストの影響力を賢く活用できる「チャンス」が到来したりすることがあるのです。それは、彼らが「共感度の高いヒットコンテンツ」を発信し、広範囲に、想像以上の「ブーム」を生み出したタイミングに乗ること。

今日は、最近中華圏で空前の「東京ブーム」を巻き起こしている、台湾出身のミュージシャンの新曲(ミュージックビデオ)の波及力について考察してみたいと思います。

■東アジアの感性をくすぐった「周杰倫」の新曲の舞台になった「東京」
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台湾の人気歌手「ジェイ・チョウ(周杰倫)」が最近リリースした新曲「泣かないと約束したから(原題:説好不哭)」が、リリース直後から台湾、香港、中国など中華圏のウェブ上で同時に話題を呼び、いまだに熱が冷めないという状態です。

▲Image by A-Sketch MUSIC LABEL
特に中国での人気が圧倒的で、8月16日の発表と同時に約半日で中国3大音楽配信プラットフォーム「QQ音楽(QQ Music)」「酷狗音楽(Kugou Music)」「酷我音楽(Kuwo Music)」で695万曲、2000万元(約3億円)の売り上げを記録したとのことで、楽曲の良さはさておき、その爆発的なバズりの理由は、東京が舞台となったPV(ミュージックビデオ)が多くの人々の感性をくすぐったから。

■メガヒットしたPVは「下町」を「聖地」と化す
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この新曲のミュージックビデオは、若い恋人同士のストーリーを描いた内容になっていますが、ヒロイン役を演じたのが日本の女優「三吉彩花」さんで、ロケ地が東京であることが話題となりました。
ただ、話の舞台が流行の最先端でアーバンな東京の背景ではなく、渋い魅力を放つ谷中銀座や高円寺など東京の「下町」にあたるスポットが描かれているのが面白いところ。中国のネットでは、ロケ地の詳細を紹介する記事が相次いで出現、10月の国慶節の大型連休での旅行先を検討していた中国人の関心を集めました。
現地メディア「東方網」によると、旅行予約サイトではロケ地の東京タワーやスカイツリーなどの検索数が急増し、平常時よりも80%ほど増加したそうで、ミュージックビデオに登場する谷中銀座や高円寺の商店街、ストーリーの中心となった老舗のカメラ店などを巡るいわゆる「聖地巡礼」のパッケージツアーも登場しているとのこと。
東方網は、こうした人たちの1人あたりの消費額は、旅費を含め30万円を超えると予想しており、新たな「聖地」をめぐる旅行は、ジェイのファン層が多い20〜30代の観光客を中心に新たなトレンドになる可能性を秘めていると分析しています。

■ブームの恩恵はすでに現れる
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▲Image by machimachi Instagram
ミュージックビデオで、ヒロイン(三吉彩花)が店員役を演じる、東京・原宿にあるチーズティーが話題の台湾発ドリンクショップ「machimachi」は現在、台北や東京、京都、ソウル、ロンドンなどでショップ展開していて、楽曲解禁とともに東京や台湾のショップが大盛況となり、特に今年6月オープンした中国の第1号店では4時間待ちも当たり前という驚くべき人気店になっているそうです。
この「machimachi」というブランドが楽曲とタイアップしプロモーションを仕掛けたのか、単にロケーション協力だったのかはさておき、いちミュージシャンのPV上の露出としては、ブランドマーケティング効果は絶大で、おそらくこれほどの反響は予想外であったのではないでしょうか。
しかも、そのロケ店舗が東京であったことが、中華圏の訪日旅行の起爆剤になったことは、ある程度ターゲティングを見込んでいたとしても、結果的に期待以上のブームに乗った「恩恵」として考えられるでしょう。

■国をまたぐ「大物インフルエンサー」と「プラットフォーム」の力
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元々、ジェイ・チョウはハリウッドでも活躍する中華圏屈指のマルチアーティストで、今回のブレイクは彼の知名度人気からして当然のことだったかもしれません。ただ、注目すべき点は、ブームの震源地が「ウェブ」であったということ。
KOLや網紅とは違って、彼のメインステージは映画やTVなどの「マスメディア」であり、広告塔としてのサイズバリューで言うとCMやスクリーン向きの影響力を持っていますが、これほど短時間で、日本を含むアジア全般で反響を出すことができたのは、動画プラットフォームからの発信であったからだと思います。
話題の動画はSNSを通して、中華圏のみならず全世界へ瞬く間に広まり、ファンたちは楽曲やPVのビハインドストーリーなどを細かい情報として再拡散し、作品を取り巻くすべての要素がインフルエンスされ「ブーム」になるからくりを忠実に辿った結果ではないかと考えられます。
おかげで、ただのロケ地だった東京の各スポットは「聖地」となり、まるで日本のアニメのそれを巡るように、訪日旅行のコンテンツとして新たな市民権を得る街も生まれました。
局地的にターゲティングされたバイラルマーケティングが全盛の時代に、恐竜のような知名度を持ったインフルエンサーと国境のないウェブプラットフォームが「国をまたぐ影響力」を見せつけた事例として、印象的な事例でした。

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